【M&Aとは?】事業承継の進め方や費用について解説

事業承継・M&A

M&Aとは、英語のMergers and Acquisitionsの頭文字をとったものです。

一般的には企業の合併・買収を指すと言われていますが、広義には企業の競争力の強化、新規事業の多角化などの業務提携を含む企業戦略全般を指して使われることもあります。

合併には吸収合併や新設合併などが、買収には株式譲渡、新株引受、株式交換などがあります。

また、M&Aのなかでも提携関係のある複数の企業間で株式の異同を伴うものを特に資本提携といい、販売協力、資材調達、共同研究開発など業務上の協力関係を築くことを業務提携といいます。

また、その両方を組み合わせたものを資本業務提携と表すこともあります。ここではM&Aが求められる背景や、M&Aの手法、メリットデメリットなどの基礎知識についてご紹介します。

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M&Aが求められる背景

少子高齢化で国内市場が縮小する中、業績が好調であるにも関わらず、「後継者がいない」「今後の成長戦略が描けない」といった悩みを抱える中小企業が増えてきています。

特に後継者不在の問題が大きく、仕方なく廃業を選ぶ経営者が年々増加傾向にあります。そのような中で、大きな注目を集めているのが「M&A」による事業承継です。

M&Aにより企業を信頼できる企業へ譲渡することで、長年培ってきた企業のノウハウを途絶えさせることなく、事業を存続・拡大させることが可能になります。

上記の図の通り、M&Aの件数は2011年より増加している状況です。

しかしながら、自分の会社を譲渡する・会社を譲り受けるということは、そう簡単に決められるものではありません。

また人生においても何度もあるわけではありません。そこで、M&Aには関心をもっているものの、「企業の買収・売却に失敗したくない」「従業員のことをしっかり考えたい」「M&Aの具体的な費用や手順を知りたい」「M&Aにはどんな事例があるのか知りたい」という方に向けて、M&Aのメリットとやデメリット、具体的な手順などについて解説します。

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M&Aでどのような課題解決が望めるのか

後継者問題の解決

売手側のメリットとして昨今注目されているのは、「経営者の高齢化による後継者問題」の解決です。

人材難により後継者がいない。または親族や社内に後継者がいる場合でも、自社株式の承継に伴う税負担やコストに耐えられない。

このような課題を抱えている場合でも、上場企業や同業の大手企業をはじめとした経営・財務基盤の強固な信頼できる企業に譲渡することで、事業を継続させることが出来るだけでなく、さらなる発展も期待することができます。

事業成長に必要な時間を買える

買い手側の最大のメリットとして、「事業成長に必要な時間を買える」という点があります。新規事業への参入や事業の多角化、市場シェアの拡大を目指す場合、ゼロから事業を育てるには膨大な時間とコストが必要になります。

M&Aを活用し、事業譲渡や株式譲渡で優良企業(事業)を買収すれば、企業が保有するノウハウや取引先、人材、技術などを継承できるため、時間やコストを抑えて加速度的に自社の事業を発展させることがかのうです。

従業員の雇用の安定

多くの中小企業経営者は、自社を長年支えてくれた従業員を家族のように考えているでしょう。信頼の置ける優良企業に事業や会社を引き継ぐことで、家族同然である従業員の雇用の安定も図れます。

そして、経営者自身も保有する株式を売却して現金化することで、廃業コストをかけずに第二の人生を歩む資金を得ることができます。

M&Aの手法

中小企業の後継者問題をはじめとする経営課題を解決するために有効なM&Aには、様々な手法が存在します。ここからは、代表的なM&Aの手法の特徴についてご紹介します。

M&Aの手法の分類

企業提携には、資本の移動や資本参加を伴う資本提携と、資本の移動を伴わない業務提携(技術・生産・販売等に関する業務提携)に分けられ、前者「資本提携」を広義のM&Aと定義します。

広義のM&Aは「合併」「買収」「合弁会社設立」「資本参加」の4つに分かれます。そのうち、「合併」「買収」の2つの狭義のM&Aと定義します。規模の大きい手法から順に、具体的な内容を見ていきます。

資本業務提携

資本業務提携は、業務提携に伴い、対象会社に対する増資または対象会社の一部の株式を譲渡することで、提携先に対して議決権を与える手法です。

資本提携により、業務提携という単なる契約関係より強固な関係性を構築することが出来ます。資本提携を行うときは、強力内容を明確にするため、同時に業務提携契約を締結することが一般的です。

業務提携

資本の移動を伴わない提携であり、企業が共同で事業を行うことで、お互いが資金、技術、人材等の経営資源を提供しあって、相乗効果(シナジー)を得ることによって、事業競争力の強化を目指すものです。

具体的には、新規事業への進出、技術力の強化・補充、技術の共同開発、生産力の強化・補充、販売力の強化・補充などの目的があります。

技術提携ライセンス契約、共同開発契約等を結び技術を利用する
生産提携製造委託契約等を結び、製品を生産する
販売提携販売店契約、代理店契約、OEM契約等を結び、商品を販売する
その他仕入れ提携、調達提携等

合併

合併は、複数の会社を1つの法人格に統合する手法です。消滅する会社の権利義務の全部を存続会社が吸収して承継させる手法である「吸収合併」と、新規に会社を設立し、新設会社に、消滅する合併対象会社の全ての権利義務を承継させる「新設合併」があります。

買収

買収は、「株式譲渡」、「第三者割当増資」、「株式交換」、「株式移転」、「事業譲渡」といった手法に分かれます。

「株式譲渡」は、株主が保有する対象会社の株式を対価と引き換えに他社へ譲渡することにより承継させる手法であり、中小企業のM&Aにおいて最も多く採用されています。

合弁会社設立

複数の企業が資本を出し合い、合弁で会社を立ち上げることを言います。

資本参加

対象会社に増資または対象会社の一部の株式を譲受けることで、限られた議決権の中で経営に参画することをいいます。

M&Aのメリット・デメリット

ここではM&Aのメリット・デメリットについて紹介します。会社を譲渡(売却)する側と、会社を譲受け(買取)それぞれの視点から解説します。

譲渡側のメリット

株式譲渡の際には、将来の超過収益力等を加味した「のれん」が上乗せされて評価されるため、他のスキームよりも大きな創業者利潤を得ることができます。

また個人の担保・個人保証も解除され、後継者問題の解決とオーナー経営者のハッピーリタイアメントを実現することが大きなメリットといえます。

創業者利益(株主利潤)

M&Aで株式を譲渡する際の株式価格は、将来の超過収益力等を加味した「のれん」が上乗せされて買手に評価されることが一般的であるため、オーナー経営者は他のスキームよりも大きな創業者利潤(株主利潤)を得ることができます。

従業員の雇用安定とさらなる活躍

M&Aで株式や事業の売却を検討される際、多くのオーナー経営者にとって気がかりなのは,譲渡後の従業員の処遇ですが、中小企業においては、良くも悪くも人に依存する側面が大きいため、実際の中小企業のM&Aでは役員・従業員について一定期間の雇用継続が条件として盛り込まれる事が通例です。

また、社名や勤務地についても現状維持とすることが通例です。さらに、より大きなグループの一員となることで、従業員の活躍の場が広がり、これまで自社ではできなかった従業員の育成強化や、多様なキャリア開発など、従業員の士気向上、従業員家族の安心につながるケースも多いのです。

後継者問題の解決

独自の技術やノウハウ、販売先等を保有しているものの、後継者が存在しないことで事業の継続が難しくなっている企業でも、他社に譲渡することで、長年培ったノウハウや人材を活かして企業の存続を図ることができます。

事業継続と拡大

廃業を検討する一方で、「自分の代で会社をなくすのは忍びない」と考える経営者の方も、成長意欲のある企業に自社を託すことで、事業の継続と更なる拡大が図れます。

廃業とコスト削減

会社を廃業する際には、さまざまなコストがかかります。例えば、会社設備の処分費や在庫処分費、店舗を賃貸しているなら現状回復、解雇する社員への手当やさまざまな書類の手続き、専門家に廃業手続きを依頼するための報酬などです。

しかし、会社を譲渡すれば、このような廃業コストはかかりません。

譲渡側のデメリット

想定していた価格で譲渡できない

想定していた価格で株式または事業を譲渡出来ない場合があります。

M&Aを成功させるコツは「最も高く売れるタイミングで、最良の相手に譲渡すること」です。売り時を逃さないようにするためにも、業界を広く知る専門のアドバイザーから助言を受けることをお勧めします。

取引先の反発や契約打ち切り

買収によって契約条件が変更されたり、担当者が代わったりした場合、長年の取引先へ影響を及ぼす場合があります。

譲受け側のメリット

既存事業の拡大

株式譲渡や事業譲渡により、事業を継承することで、売り手側企業が長年築き上げてきた販売網や供給網、技術を取り込むことができ、シナジー効果を生みながら既存事業の市場シェアを拡大することができます。

新規事業への参入、事業の多角化

自社が保有していない優良な事業や技術を持つ企業を買収することで、新規事業への参入や事業の多角化を図れます。新規事業を立ち上げるコストや時間の削減をしながら、事業の成長を加速させることができます。

譲受け側のデメリット

仕入れ先や取引先への営業

経営方針の変更によって、仕入れ先や販売先などの取引先へい影響を及ぼす場合があります。

簿外債務・偶発債務

譲渡の実行後に、貸借対照表上に記載されていない簿外債務が発覚し、問題となるケースがあります。買取先企業の財務リスクの確認は、譲渡の実行前に買収監査(デューデリジェンス)を実施することが一般的です。

M&Aの手順・流れ

ここでは売り手側の企業の視点から、どのようなプロセスを経てM&Aが成立するのかを説明します。

検討・準備フェーズ

売り手にとってのM&Aの検討は、まず自社の株式価値を把握するところからスタートとなります。

M&Aでは買い手によって評価が変わってきますが、会計ロジック(純資産法、収益還元法、類似会社比準法など)に基づく価値から大きく差異が出ることはありません。

金銭的な条件はM&Aを進めるか否かの大きな要因になるため、検討当初から把握することが重要です。

打診・交渉フェーズ

次に候補先の選定です。大手企業のM&Aなどでは最大限の経済条件を提示してくれる相手を探すために売却することをオープンにして競争入札のような流れで進めることがありますが、

事業規模の小さい中小企業では、取引先の毀損、従業員の離反など事業活動に大きな影響を与えるリスクもあるためクローズな環境で進めることがほとんどです。

候補先への打診はある程度、数を絞って打診していくことで情報漏えいのリスクも減ります。

関心を示した買い手候補先から具体的な条件提示を貰うため、複数回にわたって面談や資料開示を行い譲渡価格とスケジュールを含めた正式な意向を書面にて受取ります。

この時点で両者間の合意が取れれば、基本合意契約を締結します。基本合意契約には売買に関する法的拘束力はないものの買い手に独占交渉権などを付与する事が一般的です。

これは買い手にとってもこの後に行う買取監査(デューデリジェンス)で多額の費用をかけて詳細の調査をしていくことになることから優先的に交渉権を与えるという意味と、自らも誠実に監査に応じていく義務を負うことなどが盛り込まれます。

最終契約フェーズ

買収監査(デューデリジェンス)とは、ビジネス、法務、会計、税務など多岐にわたりますが、中小企業の場合には、会計面を中心とした調査のみであることもあります。

買い手は買収監査(デューデリジェンス)で把握した情報をもとに、経済条件からオーナーの譲渡後の引継ぎ期間など、最終的な諸条件の調整を図り契約書を作成していきます。

すべての条件が整うと契約締結の後に、譲渡決済(クロージング)をおこないM&A取引は完了します。

M&A関連サービスと費用

M&Aを円滑に進める上で、専門家のサポートはやはり欠かせません。ここでは、専門家のサポートに関連するサービス費用について説明します。

中小企業では仲介型主流

M&Aアドバイザーは、FA(ファイナンシャルアドバイザーの略)業者と仲介業者に大別されます。FA業者とは主に売り手または買い手いずれかの片側に立って、

クライアントの利益を最大化するために助言を行うサービスを提供している事業者の総称です。欧米の投資銀行から入ってきたスタイルで、主に外資系投資銀行、国内大手銀行、大証券会社、独立系のM&Aブティックなどが務めており、利害関係者の多い上場企業同士の大型M&A案件ではFAを起用する例が多く見られます。

一方、中小企業のM&Aでは、仲介型が主流です。中小のM&Aを専業とする独立系ブティックが、買い手売り手双方に対して、検討段階からマッチング、交渉、クロージングまでの一連の助言や手続きの補助を行っていくサポートサービスを提供しています。

M&Aの交渉過程は非常にデリケートなものであって、取引先・従業員・会計・税務・ガバナンスなどさまざまな問題を解決し、特に終盤の条件交渉では譲渡側・譲受側双方で利害が対立することもあり、成約に向けては多くの障壁が立ちはだかります。

そういった意味ではやはり豊富な実績・経験に基づき、M&Aの成約までをリードしてくれるプロフェッショナルとしてサービスの提供を行ってくれるパートナー探しは非常に重要になってきます。

その他の各専門分野の業者

複雑なM&Aを成功に導くために、近年では各分野の専門家の力を借りることが増えてきています。

前述のM&あアドバイザーのほか、主に買い手側の買収監査(デューデリジェンス)や株式価値算定に関する第三者評価を依頼する専門家として、ビジネスデューデリジェンスを担当する戦略コンサルティング会社、会計・税務のデューデリジェンスや株式価値算定を担当する監査法人や税理士法人を母体とするFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービスの略)、法務デューデリジェンスを担当する法務事務所などがありますが、課題に応じて不動産鑑定会社や信用調査会社などを登用するケースもあります。

手数料について

アドバイザリー事業者によって、手数料の形態は千差万別です。ここでは、代表的なコストについて大きく3つに分けて紹介します。

イニシャルコスト

アドバイザリーサービスの開始から発生する手数料が、着手金やリテイナーフィー(リテインともいう)といったイニシャルコストです。

着手金は一括払い、リテイナーフィーは定額顧問料として月額の支払いが主流です。そのほかに売り手対象会社の株式価値を算定するために株価算定(企業評価)費用として数十万から数百万かかることもあります。

いずれにしても検討段階から数百万というのが一般的です。

マイルストーン

M&あでは検討段階から成立までに数年かかることも稀ではありません。そこで、一定のマイルストーンを決めて費用が発生するものもあります。これを「マイルストーン」といいます。

具体的な相手と主要な部分で条件合意をする基本合意の時点で発生する場合が多く、最終的な報酬の10%~20%程度が一般的です。

成功報酬

M&Aの成立後に、成功報酬として支払う手数料です。M&Aの譲渡対価となった株式価値の総額に一定の料率を乗じるケース、譲渡対価に対象会社の負債(正確にはネット有利子負債が多い)を足した企業価値の総額に一定の料率を乗じるケースがあります。

乗じる手数料率は固定の場合もあれば、算定総額に応じて料率を計算していくレーマン方式という場合もありますが、概ね1~5%の範囲となっています。

譲渡企業(売手)は税金についても把握が必要

オーナー経営者がM&Aで株式譲渡をした場合、つまり株主である個人が株式を叙とした場合は、申告分離課税で株式譲渡所得に対して、復興特別所得税、個人住民税が課せられます。

株式譲渡所得は「収入金額ー取得費および譲渡費用」で計算されそれに対する現行の税率は、2018年4月現在で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%)である一方、

総合課税の最高税率は55%のため、M&Aの際の株式譲渡金額と役員報酬(給与所得)複数年分が仮に同額であった場合は、税率の差額分だけM&Aの方が多くの手取り金額を得られるということになります。

また、株主である個人が株式譲渡する場合には、株式譲渡に役員退職金を組み合わせることにより、税負担を最小化させることができます。

役員退職金の損金算入限度額は、「最終報酬月額✖勤続年数✖役職に応じた功績倍率」で計算され、譲渡オーナーが得られる退職所得は「(退職金ー退職所得控除)✖1/2✖税率ー控除額」で計算されます。

役員退職金は、基本的には他の所得よりも実施的な税率が低くなるため、譲渡オーナーが得られる手取り額を増加させることになります。

さらに買い手企業にとっても、株式譲渡代金の一部を役員退職金として譲渡対象企業から譲渡オーナーに支給することで、対象企業で経費処理をすることができ、役員退職金の支給分だけ株式取得代金を圧縮できるとといった、メリットがあります。

ただし、適正水準を超えた役員退職金の過大部分については税務調査で損金不算入となる可能性もありますので個別に専門家に相談の上、適正な水準に留めることが必要です。

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まとめ

今回はM&Aとは?から事業承継の進め方や費用について解説してきました。高齢化社会が本格化、さらには少子化と企業の存続をめぐる後継対策は企業オーナーとして非常に重要な決断となります。

したがって、まずは「相談をしてみる!」という行動がいち早く必要になってくるわけです。まずは相談してみる。そんな行動への一歩になれば幸いと思っています。最後までお読み頂き有難う御座いました。下記に実績があって無料相談、しかも着手金無料の窓口をご紹介させて頂いておきます。

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